長い「夏休み」と「ジャズ」
- 2015/9/27
- コラム
東京から故郷に帰るにはスカイメートと言う学生専用の制度があり、半額で飛行機に乗れた。
パソコンでの予約などはなく(まだパソコンがなかった)当日のキャンセルや空席がある時だけ使える制度だ。
時間に余裕のある学生は大いに助かった。
飛行機で故郷へ帰る以外の交通手段は列車だ。
東京と鹿児島を結ぶ「寝台列車ブルートレイン」なる列車がいる。
東京を夕方6時に出て次の日の午前中には鹿児島に着く。よく利用した。
二段ベッドにもぐりこみ駅弁を食べる。単行本を読みながら結構楽しい旅だ。
途中で、すれ違う列車の時間待ちをする。まだ複線化になっていなかったのだろう。
朝起きると川内付近だ。川内川を渡り、いよいよ故郷鹿児島の西駅につく。
エスカレーターなどなく線路の上の連絡通路を歩いてあがり、歩いて下がり、改札で駅員さんに切符を渡す。
目の前は桜島、薩摩漬け(中園久太郎商店の看板商品)の看板が迎えてくれる。
それから2カ月長い「夏休み」だ。
試験も終わっているから、まるまる2カ月の自由時間。なんと気持ちいいことだろう。
東京では標準語らしい話し方をしているが、いつものイントネーションで話せる。
しかも幼馴染の同年代の友人が大勢いる。
鹿児島で学生だったり、福岡の大学だったり。
故郷は実に居心地がいい。
夜はリバーサイドと言うジャズ喫茶によく行った。
ジャズ好きの友人は「ジョンコルトレーンはすごい」「ミンガスのベースは腹に響く」などとうんちくを話す。
私も高円寺のジャズ喫茶に行っていたので、ジャズの本はよく読んだ。
黒人のブルース(友人はブルーズと発音した)は魂に響くなどと言う。
ここではボブディランや二ールヤングもかなわない気がした。
私はミシシッピージョンハートが好きでここではジョンハートの話しで対抗した。
このだみ声がいいのだ。
マスターはジャズが好きでジャズ喫茶をはじめたらしいがそれでは食えず1階では普通の喫茶店も経営していた。
それはそうだろうコーヒー1杯で3時間以上いるのだから。
しかしマスターはいやな顔一つせず学生の話しに付き合ってくれる。
音響機器も鹿児島には2台しかないJBLだ。
ジャズ喫茶をでる時は次の日になっている。
友人の家は歩いて30分ほどかかるところだが
街中が実家の私は「送るよ、と言って友人の家まで歩いた、歩きながら話した」
ひと夏、こんな生活が続く。バイトをして友人と話す。この繰り返しだが飽きない。
その時はこんなことが一番いいように思えた。
そしてまた夏がすぎ、東京での生活が始まる。
東京の高円寺にある、ジャズ喫茶で「トムウエィツ」をリクエストした。
「学生さん、渋いね」と言われる。悪い気はしない。
なんとなく大人になった気がした。
またジャズの本を読みながら、3時間の時間を過ごした。
秋の学園祭が近づいていた。